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はっけんでんだんよ
八犬伝談余
内田 魯庵
「南総里見八犬伝 下」日本名著全集刊行会、1928(昭和3)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,945 字 · 43 页
を難じて、『水滸』の豪傑がもし方臘を伐って宋朝に功を立てる後談がなかったら、『水滸伝』はただの山賊物語となってしまうと論じた筆法をそのまま適用すると、『八犬伝』も八犬具足で終って両管領との大戦争に及ばなかったらやはりただの浮浪物語であって馬琴の小説観からは恐らく有終の美を成さざる憾みがあろう。そういう道学的小説観は今日ではもはや問題にならないが、為永春水輩でさえが貞操や家庭の団欒の教師を保護色とした時代に、馬琴ともあるものがただの浮浪生活を描いたのでは少なくも愛読者たる士君子に対して申訳が立たないから、勲功記を加えて以て完璧たらしめたのであろう。が、『八犬伝』の興趣は穂北の四犬士の邂逅、船虫の牛裂、五十子の焼打で最頂に達しているので、八犬具足で終わってるのは馬琴といえどもこれを知らざるはずはない。畢竟するに馬琴が頻りに『水滸』の聖嘆評を難詰屡々するは『水滸』を借りて自ら弁明するのではあるまいか。
だが、この両管領との合戦記は、馬琴が失明後の口授作にもせよ、『水滸伝』や『三国志』や『戦国策』を襲踏した痕が余りに歴々として『八犬伝』中最も拙陋を極めている。