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はっけんでんだんよ

八犬伝談余

内田 魯庵

「南総里見八犬伝 下」日本名著全集刊行会、1928(昭和3)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,945 字 · 43 页

青空文庫

扇谷家第一の猛者小幡東良が能登守教経然たる働きをするほかは、里見勢も上杉勢も根ッから動いていない。定正がアッチへ逃げたりコッチへ逃げたりするのも曹操が周瑜に追われては孔明の智なきを笑うたびに伏兵が起る如き巧妙な作才が無い。軍記物語の作者としての馬琴は到底『三国志』の著者の沓の紐を解くの力もない。とはいうものの『八犬伝』の舞台をして規模雄大の感あらしめるのはこの両管領との合戦記であるから、最後の幕を飾る場面としてまんざら無用でないかも知れない。

が、『八犬伝』は、前にもいう通り第八輯で最高頂に達し、第九輯巻二十一の百三十一回の八犬具足で終わっている。それより以下は八犬後談で、切り離すべきである。(私の梗概がその以下に及ばないのはこの理由からである。)『八犬伝』の本道は大塚から市川・行徳・荒芽山と迂廻して穂北へ達する一線である。その中心点が大塚と行徳と荒芽山である。野州路や越後路はその裏道で甲斐の石和や武蔵の石浜は横路である。富山や京都は全く別系統であって、富山が八犬の発祥地であるほかには本筋には何の連鎖もない。地理的にいえば、大塚と行徳と荒芽との三地点から縄を引っ張った三角帯が『八犬伝』