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はっけんでんだんよ
八犬伝談余
内田 魯庵
「南総里見八犬伝 下」日本名著全集刊行会、1928(昭和3)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,945 字 · 43 页
なかんずく、親兵衛に到って極まる。
『八犬伝』には幾多の興味ある挿話がある。例えば船虫の一生の如き、単なる一挿話とするには惜しい話材である。初めは行き暮れた旅人を泊らしては路銀を窃む悪猟師の女房、次にはいびりの猫化郷士の妻、三転して追剥の女房の女按摩となり、最後に折助の嬶となって亭主と馴れ合いに賊を働く夜鷹となり、牛裂の私刑に波瀾の多い一生の幕を閉ずる一種の変態性格である。これだけでも一部の小説とするに足る。また例えば素藤の如き、妙椿が現れて幻術で助けるようになってはツマラないが、浮浪の盗賊からとにかく一城の主となった経路には梟雄の智略がある。妙椿の指金で里見に縁談を申し込むようになっては愚慢の大将であるが、里見を初め附近の城主を籠罩して城主の位置を承認せしめたは尋常草賊の智恵ではない。馬琴はとかくに忠孝の講釈をするので道学先生視されて、小説を忌む鴆毒に等しい文芸憎悪者にも馬琴だけは除外例になって感服されてるが、いずくんぞ知らん馬琴は忠臣孝子よりは悪漢淫婦を描くにヨリ以上の老熟を示しておる。『美少年録』が(未完成ではあるが)代表作の一つである『弓張月』