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はっけんでんだんよ

八犬伝談余

内田 魯庵

「南総里見八犬伝 下」日本名著全集刊行会、1928(昭和3)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,945 字 · 43 页

青空文庫

古今作者を列べて著述の量の多いのと、なかんずく大作に富めると、その作の規模結構の大なると、その態度の厳粛なると、その識見の高邁なると、よく馬琴に企て及ぶものは殆んどない。

が、作に秀でたのは、鯛よりは鰯の生きのイイ方が旨い、牡丹よりは菜の花の方が風情があるというと同じ好き不好きを別として大抵異論はないが、人物となるとまた、古今馬琴の如く嫌われてるのは少ない。或る雑誌で、古今文人の好き嫌いという題で現代文人の答案を求めたに対し、大抵な人が馬琴を嫌いというに一致し、馬琴を好きと答えたものは一人もなかった。ただに現代人のみならず、その当時からして馬琴は嫌われていた。正面から馬琴に怨声を放って挑戦したのは京山一人であったが、少なくも馬琴が作者間に孤立していて余り交際しなかった一事に徴するも、馬琴に対して余り好感を持つものがなかったのは推測られる。馬琴が交際していたのは同じ作者仲間よりはむしろ愛読者、殊に遠方の文書で交際する殿村篠斎の連中であって親しくその家に出入して教を乞うものでなかった。ただ文書を以て交際するだけなら折々小面倒で嫌気を生ずる事があってもそれほど深く身に染みないが、面と向っては容易に親しまれないで、小難かしくて気ブッセイで堪えられなかったろう。