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はっけんでんだんよ

八犬伝談余

内田 魯庵

「南総里見八犬伝 下」日本名著全集刊行会、1928(昭和3)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,945 字 · 43 页

青空文庫

医を志したというは自分でも書いてるが、儒を志したというは余り聞かない。真否は頗る疑わしいが、とにかく馬琴の愛読者たる士流の間にはソンナ説があったものと見える。当時、戯作者といえば一括して軽薄放漫なる々者流として顰蹙された中に単り馬琴が重視されたは学問淵源があるを信ぜられていたからである。

私が幼時から親しんでいた『八犬伝』というは即ちこの外曾祖父から伝えられたものだ。出版の都度々々書肆から届けさしたという事で、伝来からいうと発行即時の初版であるが現品を見ると三、四輯までは初版らしくない。私の外曾祖父は前にもいう通り、『美少年録』でも『侠客伝』でも皆謄写した気根の強い筆豆の人であったから、『八犬伝』もまた初めは写したに相違ないが、前数作よりも一層感嘆措かなかったので四、五輯頃から刊本で揃えて置く気になったのであろう。それからが出版の都度々々届けさしたので、初めの分はアトから補ったのであろう。私の外曾祖父というのは戯作好きでも書物好きでも、勿論学者でも文雅風流の嗜みがあるわけでもないただの俗人であったが、以て馬琴の当時の人気を推すべきである。

このお庇に私は幼時から馬琴に親しんだ。