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はっけんでんだんよ

八犬伝談余

内田 魯庵

「南総里見八犬伝 下」日本名著全集刊行会、1928(昭和3)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,945 字 · 43 页

青空文庫

マダそのほかにも散逸したものがドコかに残ってると思うが、所在を明らかにしない。帝大のは偶然館外に貸出してあった一冊が震火を免かれて今残っている。この一冊と早大図書館所蔵本とが今残ってる馬琴日記の全部である。この早稲田本を早大に移る以前に抄録解説したのが饗庭篁村氏の『馬琴日記抄』であって、天保二年の分を全冊転印されたのが和田万吉氏の『馬琴日記』(原本焼失)である。

饗庭氏の抄録本もしくは和田氏の校訂本によって馬琴の日記を読んだものは、誰でもその記載の事項が細大洩らさず綿密に認められたのを驚嘆せずにはいられない。毎日の天候気温、出入客来、他出等、尋常日記に載すべき事項のほかに、祭事、仏事、音物、到来品、買物、近親交友間の消息、来客の用談世間咄、出入商人職人等の近事、奉公人の移り換、給金の前渡しや貸越や、慶庵や請人の不埒、鼠が天井で騒ぐ困り咄、隣りの猫にを取られた不平咄、毎日の出来事を些細の問題まで洗いざらい落なく書き上げておる。殊に原本は十五、六行の蠅頭細字で認めた一年一冊およそ百余張の半紙本である。アレだけの著述をした上にこれだけの丹念な日記を毎日怠らず附けた気根の強さ加減は驚くに余りある。