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ろくがつ

六月

相馬 泰三

「早稲田文学」1913(大正2)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,673 字 · 37 页

青空文庫

さまざまな思いが、じめじめした雨かなどのように彼の心に降りそそいで来た。涙がいつまでもとめどなく流れ出た。

お午少し過ぎに、曽根の部屋へ宿の主婦が入って来た。主婦は忌々しそうに彼に言った。

「……あの、ご都合はいかがでございましょうか」

いつものおきまりのやつである。彼は別に言いようもないので、いつものとおり、

「どうも、今何にもないんです。どうぞ今少し待って下さい。そのうちにきっとどうかしますから」と言った。

主婦は(またか)といったような顔つきをしてしばし黙っていたが、

「わたしどもでも大変に困っているんですよ。……それに、はじめ月の五日にいくらか出して下さるはずでしたのにそれも駄目、十日までにはこんどきっとということでしたのに、それもなんなんでしょう。家でも都合があって払いの方へもそう言ってあるんです、……あんまりなんすると家がみんな不信用になって商売が出来なくなってしまうんです。……是非何とかしていただかなければならないんですが、……」

と言って寝ている曽根の顔を覗くようにして見た。

いつもなら、曽根はこう言われればついそれにつり込まれてその気になり、本当に自分が大変に済まないように思い、出来ないのは知りつつも(両三日中にはきっとどうかしますから)といった工合に出るのだが、今日はそれを言う元気さえなかっ