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ろくがつ
六月
相馬 泰三
「早稲田文学」1913(大正2)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,673 字 · 37 页
……」
なかなかうまいぞ、と思わず手を拍った。すると、その様子があんまり突飛でおかしかったものと見えて、擦れちがった二人連れの紳士がくすくすと笑って行った。彼はそんなことには気もつかず、なおその先を一生懸命に考えていた。
新橋の先まで行って、ふと気がついて引き返えした。
もう、灯がぽつぽつつきだしていた。屋根上や、特にそのために造られた高い塔の上の広告燈が、(さあそろそろ初めましょうよ)とでも言うように二つ三つ、まだ暮れきらない薄明りの空に明るくなりまた暗くなりしていた。夕靄の白く立ちこめた街の上を、わけもなく初夏の夕を愛する若いハイカラ男やハイカラ女が雑踏にまじってあちらこちらへ歩るいている。流行のみなりをしていそいそと、まるで尾ひれを振ってあるく金魚かなどのようにしなしなと品をつくッて歩るいている。裏通りの方ではまた、どこか近くの料理屋に宴会でもあって、それへ招かれでもしたのか濃艶におめかしした芸者衆が幾人も幾人も自動車で運ばれて通っていた。
曽根は(誰だかうまくやってる奴があるな)と思った。どことかに、自分に隠れて、自分の目のとどかないところに、自分などの知らないことで、いいことがどっさりあることと思うた。