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ろくがつ

六月

相馬 泰三

「早稲田文学」1913(大正2)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,673 字 · 37 页

青空文庫

それから小半時間ばかりして、友の松本が彼らのよく行く銀座の××酒場へ入って行くと、そこの隅っこの方に一人で淋しそうにウイスキーを飲んでいる曽根の姿を見出した。松本はちょうど誰かいい相棒をほしいところだったから酷くよろこんだ。そーッと曽根に気づかれないように彼の背後から両手で彼の目を塞いだ。

曽根は飛び上って喜んだ。握手を求めながら言った。

「何かうまいことでも見つかったかね」

「それどころではない、僕は社をやめてしまったよ」

「え? どうして?」

「あんまりけちなことばかりで、退屈で退屈で我慢が出来なくなってしまった」

「それで、どうしようというのだ」

「どうと言って別に当てなんかあるものか。――まあ、二ッちも三ッちもならなくなるまではこうしているさ。その先はどうにかなる。口入れ屋へでも何でも出かけるんだ」

曽根は、何だか自分もやろうとしていたことを先を越されたような気がした。そしてある感激を覚えた。彼は盃をあげて突然

「松本! 君の健康を祝す」と叫んだ。

酔いがまわるにつれて二人は快弁になった。二人とも相手になんかおかまいなしで、てんでん勝手なことをどなった。