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きょうさんとうこうはんをぼうちょうして

共産党公判を傍聴して

宮本 百合子

「働く婦人」日本プロレタリア文化連盟、1932(昭和7)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,846 字 · 10 页

青空文庫

何と云うか、てんで相手ではないんです。高岡只一がモスコーで支那人かと思われた。と云うといろいろ為になる陳述の間は質問一つせず静まりかえっていた宮城裁判長が、例の鼻にかかった声で「ヨーロッパで日本人が支那人に間違えられるのは珍しいこっちゃない。どこででもそうだ」とやっと半畳を入れます。すると高岡只一はすぐ「そうだそうですね。しかしモスコーで、労働者が支那人かときくのは、他のブルジョア国でのように軽蔑してきくのではない。支那革命に対してそれだけソヴェト同盟の大衆が注意を払い支持しているということの証拠である」と、はっきり大衆の立場から、裁判長の半畳を訂正します。もう何とも裁判長は音が立たないのです。高岡只一が凡そ四時間に亙って陳述した間、裁判長はただ数度小さい言葉尻をとらえて、それで威厳でも示そうとするようにこけ脅しめいた文句を云いましたが、誰も問題にしていない。威厳は裁判長にはないのです。党員たちの態度の方に威厳があると感じました。共産党の公判は公開ではあるが、勤労大衆に便利な日曜日には開廷されません。勤めがすんでから傍聴へ職場から動員されるように夜公判がひらかれることもありません。