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くらのすけるす

内蔵允留守

山本 周五郎

「キング」大日本雄弁会講談社、1949(昭和15)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,082 字 · 24 页

青空文庫

二

と書いた小さな名札が打ちつけてある。それを入って、竹籔に囲まれた道をなだらかに窪地へ下りると、一棟の貧しげな農家が建っている。そしていましも、その前庭になっている広場で四五人の壮夫が、矢声烈しく木剣の試合をしていたが、虎之助が笠をとりながら静かに近寄るのを見ると、一斉に手を控えて振返った。

二

「……なにか御用か」

色の浅黒い、巌のような肩つきをした大きな男が、虎之助の方へやって来た。左の眉尻に指頭大の黒子がある、彼は虎之助が鄭重に来意を述べるのを、みなまで聞かず、手を左右に振りながら、

「ああ駄目だ駄目だ」と、さも面倒くさそうに云った、「……せっかくだが先生はお留守だ、また改めて来るがいい」

「御不在のことは承知です」無作法な挨拶に虎之助はむっとしたが、それでもなお静かに続けた、「然し貴殿方もお帰りを待っておられるとのことゆえ、できるなら拙者もお住居の端なり、置いて頂こうと存じてまいったのです」

「いかにも、我々もお帰りを待っているには相違ない、然し此処はお救い小屋ではないからな、そうむやみに誰でも彼でも転げ込むという訳にはゆかんぞ」

まるで喧嘩腰の応待だった。