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しゃせいにでかけたしょうねん
写生に出かけた少年
小川 未明
「小学四年生」1939(昭和14)年8月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,639 字 · 4 页
「どうして、ばかになったのだろうね。」
南は目をみはりながら、あちらからくる男を見ていました。帽子もかぶらずに、手のひらを熱心に見つめています。
「あれは、金貨みたいだね。」
「は、は、は、金貨なもんか。きっと、新しい一銭銅貨なんだよ。光るから喜んで見ているのだろう。」
「たくさん持っているね。」
「ほんとうに、光るのばかりためたんだろう。」
ふつうならば、高等小学か、中学一年へでも入っている年ごろでした。どうしてばかになったんだろうと思うと、南は、なんだかいじらしい気がして、笑われなくなりました。
男は、こちらに自分を見ているものがいるとも知らず、また、夏の景色がどんなに美しかろうと目を向けず、ただ、手のひらの銅貨に気をとられて、ひとり、にやにや、たのしそうに笑いながら、わきみもせずに、道を歩いていました。
すると、こっちから、馬子が、手綱をとり、馬に空車を引かせてやってきました。
そして、いつかばかとすれちがいになったのです。それでもばかは、ただ自分の手のひらの上の銅貨だけを数えたり、ながめたりしていました。
「あぶない。」と、西田が、思わず、いったときです。