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しゃしんにそえて
写真に添えて
宮本 百合子
「中條精一郎」(追悼録)、国民美術協会、1937(昭和12)年1月発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,315 字 · 7 页
家庭で、子供たちの美術的な教養を高めるような努力というものを特別にはしませんでしたが、何かの折にふれ、若い時分の思い出として、高等学校時代にこの祥瑞を買ったんだよ、なかなか俺も馬鹿にしたもんじゃなかろう、と笑いながら、柱にかかっている一輪差しを眺めていたことがあり、また、今も古ぼけてよごれながら客間の出窓に飾られている石膏のアポロとヴィナスの胸像も、やっぱり高等学校時代の買物で、これを貧乏書生が苦心して買って家へもって帰って来たら、八十何歳かの祖母が、そんな目玉もない真白な化物はうちさいれられねえごんだと国言葉で憤慨し、それを説得するに大骨を折ったと話したりしたこともありました。
金があったらば、父も少しはよい絵を買いましたでしょう。自分ではそれが出来ず、仏蘭西展などがあったとき、私を呼んで二人でカタログなどをひろげ、買うならこれが欲しいなどと話し、実際にそれを買うということは出来ませんようでした。
陶器の趣味についても同様でした。やっぱり逸物を手に入れるには金がいる。そこまでは手が届かぬ。それで晩年は見物だけでした。亡くなる前の年の秋ごろでしたか壁懸の展覧即売会がありました。