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かんこんそうさいはかせ

冠婚葬祭博士

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,762 字 · 30 页

青空文庫

「先輩があれじゃ心細い。人間、何処かもっとガッシリしたところが欲しい」

と僕は感じたまゝを大谷君に話した。

「いや、団さんは悟り切っているから、あゝいう風に見えるんだ。今に分るよ」

「君は仲人をして貰ったから、贔負目があるんだ。本当のところは高等幇間の部類さ」

「何うして/\。骨があるんだ」

と大谷君は力強く主張した。

僕は間もなく団さんを見直した。それは忘年会の席上だった。その折、吉例によって、専務の毛利さんと取締の八田さんが余興をやる。毛利さんは義太夫で、八田さんは謡曲だ。皆迷惑だけれど、相手が重役だから、長いものに巻かれて謹聴する。

「一つ諸賢のお耳を汚そうかな?」

と毛利さんが頃合を計らって周囲を見廻した。無礼講だというので、僕は毛利さんの隣りに坐っていた。

「君、義太夫を語るなら祝儀を出し給え」

と団さんが言った。重役でも君僕で行くには一寸驚いた。

「祝儀? 貰っても宜いね。玄人を呼べば、三十円包むところだ。特別をもって、二十円に負けてやる」

「取る気かい? 君が」

「当り前さ」

「心臓が鞣革で出来ているんだね。しかし僕が幹事を勤めているからには、もう只じゃ義太夫も謡曲も唸らせない」