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かんこんそうさいはかせ

冠婚葬祭博士

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,762 字 · 30 页

青空文庫

大谷君と清水君が打ち合せて置いて、夜分僕の家へ羽織袴でやって来た。改まって何だろうと思ったら、団さん夫婦が僕を養子に懇望しているということだった。

「変だね。団さんは冠婚葬祭博士の息をかけたくないから、仲人もしないと言っていたのに」

「そこが人間の矛盾だよ」

と正使の大谷君が説明した。

「養子は御免だ」

「団さんは君が然う言うに定っていると断言した。しかし奥さんが諦めない」

「可怪しいぞ、これは。この間父が『お前は養子に行く気があるか?』と訊いた。手が廻っているのかも知れない」

「何とも分らないな、団さんのことで念入りだから」

「一体何処が気に入ったんだろう」

「第一は君の本質、第二は君が亡くなった息子さんに生写しだからだそうだ」

「ふうむ?」

「可哀そうな夫婦だよ。考えてやれ」

「養子といっても、先方に家つきの我儘娘がいるんじゃない。君が望む通りの美人を貰ってやると団さんが言っている。考えてやってくれ」

と副使の清水君が言った。二人は調子を合せて頻りに勧めた。僕は宮崎新八、八男ではないが八番目だ。養子に行く自由は持っているから、兎に角考えて見ることにした。

(昭和十二年八月、講談倶楽部)