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ふゆのやま
冬の山
木暮 理太郎
「旅」1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,733 字 · 8 页
夏の登山は都会人にあっては既に年中行事という程度にまで進んでいるとしても、一般に普及されたとは考えられない、即ち登山の民衆化という点から観れば漸く半途まで漕ぎ付けた位のものであろう。登山の民衆化などというと、人に依りては或は好んで山を俗化するものであるといきまく向きがあるかも知れない、然し指導と設備さえ誤らなければ、登山の民衆化は決して山を俗化するものではない。山の俗化に名を藉りて、一般の登山者を排しようとするのは、寧ろ陋とす可きであると共に、登山の民衆化を口実として、目前の利益の為に自然を破壊するが如き行為は、厳に警む可きものである。私は少くとも我国の夏の山は登山の民衆化に天与の道場であると信ずるものであるから、其健全なる発達を希望して止まない。
斯様に夏の登山は民衆化すべき可能性が充分にあるが、冬山の登山はどの点から考えても、まだ其民衆化は容易に実現されようとは想われない。異常な寒気に抗する為の完全な防寒具、時としては旬日に亙る大吹雪の突発に対する周到な用意、氷雪に耐える特別な靴、凍結しない食料品の選択など、数え立てれば一として一般民衆に縁のあるものはない。