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ふゆをこすつぼみ

冬を越す蕾

宮本 百合子

「文芸」1934(昭和9)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,898 字 · 14 页

青空文庫

だいたい転向作家の問題は、勤労大衆とインテリゲンチアに対し、急進的分子に対する不信と軽蔑の気分を抱かせるために、たくみに利用されていると思う。大衆の進歩的な感情を少なからず幻滅させ、部分的にはそれへの嫌厭の感情にかえた。その責任は自覚されなければならないと思う。舟橋聖一氏が昨今提唱する文学におけるリベラリズムの根源は、そういう反動的憎悪とかつて進歩の旗のにないてであったものへの報復的アナーキーの危険の上にたっているのを見て、私はつよくそのことを考えるのである。

ロシア文学史は、どの時代をとって見ても面白いが、私はこの間その中でも感銘ふかい一節を読んだ。丁度ロシアにマルクス主義が入った一八九〇年代の初めに、ロシアの二十県に大饑饉が起ったことがあった。八〇年代の農奴制度の偽瞞的な廃止やその後に引きつづいて起った動揺に対して行われた弾圧のために消極的になった急進的な若い分子は、この饑饉の惨状の現実をモメントとして民衆悲惨の問題を再びとりあげて立った。ゴーリキイがまだ二十一歳ぐらいでニージュニイで自殺しそこなった前後のことである。初期のマルキシストをふくむ急進的インテリゲンチアは、饑饉地方に出かけて行って、その救護や闘争のために全力的援助をした。