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とううん

凍雲

矢田 津世子

「婦人文芸」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,121 字 · 29 页

青空文庫

町に着いた馬車の喇叭が風の中に震えてきこえた。

「お父さんが帰ってきたかもしれない……」

お高はもう一度悠っくり考えたかった。不調に終った場合を想像すると、どうしても仙太の疾る心を抑えつけたかった。しかし、一途な仙太の激しい気性を知っていたから、もう、どうしようもないと諦めて、つられて歩きはじめた。

二人は揃って墓地を出た。真っ暗だった。

「いいじゃないか、夫婦だもの」

仙太はどうしても離ればなれに歩くのに反対した。そして、突然、つよくお高を抱きしめた。

「あえ、この人ったら! だれか見てるして」

お高は、一息ひと息に途切らして、ようよう、こう囁いた。

道には誰もいなかった。けれど、お高は俯向きに、裾をおさえて、仙太よりも少し遅れて歩いた。

黒は二人の先を行った。

柳屋先生宅での会談は、不調に終った。

先生のはからいから、若い者には先に帰ってもらって、親どうしの話し合いであった。

お高の父親の菅原孫市の言い分はこうである。

「世間では、娘と金を引き換えだなんて言ってる人もあるようですが、わしだって、この町の収入役をしているくらいの人間だし、そんな人身御供みたいな真似をしたわけでもねえです。