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とううん
凍雲
矢田 津世子
「婦人文芸」1934(昭和9)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,121 字 · 29 页
そして、時々ふりかえった。
雲がすっかり空を覆い、いまにも雨が降りそうだった。松林が、ごうごう、音をたてていた。
「仕様ねえです。何言ったって始まらねえですよ、先生」
「昨晩な、お前のお父さんが来て大体の話は聞いたが、それあ菅原の家も無理矢理身重の高さんを引っ張って行くってのは道理に外れている! お父さんもお父さんで、約束は約束だからな、今すぐ出来ねえと断らんでも、なんとか言いようもあるもんだと思う。お前の家にとって千円位の金がなんとかならんわけでもあるまいし、おっつけ孫の顔を見ようというどたんばになって、親同志の張り合いじゃあ、仲人になったこの俺も立つ瀬がないというもんだして……」
「わしもそう思うです。お父にも何度も頼んでみたんですが、今じゃお父よりもお母のほうが意地を張って、けしかけているような始末です。高の悪口ありったけ並べ立てて、ゆうべなんかも、穀つぶしが減ってせいせいしたなんて……あんまりだと思うと、ついわしも肚が立って怒鳴りつけてしまうし、この頃は、家にいるとくさくさするので、山さばかり来ていますて」
仙太は道端の松の木に片手を触れながら歩いた。