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しゅっけものがたり

出家物語

坂口 安吾

「オール読物 第三巻第一号」1948(昭和23)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,838 字 · 28 页

青空文庫

幸吉の叔母さんに煙草雑貨屋を営んでいる婆さんがあって、御近所に三十五の品の良い未亡人がいるから、見合いをしてみなさい、と言う。インテリで美人で、三十ぐらいにしか見えない。会社の事務員をして二人の子供を女手で育てゝいるが、浮いた噂もない。幸吉にはモッタイない人だけれども、あるとき叔母さんに、事務員じゃ暮しが苦しいから、オデン屋の小さい店がもちたい、と言った。それで、ふと気がついて、

「私の甥がオデン屋をしているから、そこで働いてみちゃ、どうですか。マーケットの小屋を借りるたって二万三万はかゝりますし、素人がいきなりやれるものでもありませんよ。私の甥といったって、もう五十ですけど、戦災で女房子供をなくしちゃって、どうですか、奥さん、いっそ、一緒になッちゃア。こう云っちゃ、なんですけど、この節は氏も素性もありゃしませんわよ。学問があったって、お金がもうかるわけじゃなし、あの野郎なんざ、二十年から屋台のオデン車をひっぱって歩きやがって、いくらのカセギもないくせに大酒はのみやがる、酔っ払って、のたくり廻りやがる。カミサンと餓鬼どもはヒドイ目にあったものですよ。