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しゅっけものがたり

出家物語

坂口 安吾

「オール読物 第三巻第一号」1948(昭和23)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,838 字 · 28 页

青空文庫

結婚は別として、時々は遊んでくれても、いいじゃないか。金で買うわけじゃアないんだぜ。当節はレッキとした官員さんでも暮し向きが楽じゃないそうだから、ましてお前、女手一つじゃ大変だアな。私の気持だけなんだから」

無理に女の帯の間へはさんでやると、キヨ子も無頓着にそれなりであるから、

「今晩はともかく一時間でいゝから、うちへ遊びにきておくれ」

「一時間だけね。でも、もう、あんなことしないでね。死んだ主人のこと考えると、可哀そうだから。とても可愛がってくれたんですもの」

「あゝ、いゝとも」

ともかく一安心。自宅の茶の間の灯の下でまぎれもなくキヨ子の姿を見ることができると、安堵の心は限りもない。御馳走を食べさせ自分は酒を呷って、ムリムタイに談じこむようにして、再び先日の不思議な思いを確認することができた。まさしく夢ではない。とりのぼせた一時の心の迷いではなく、まさしく目のあたり不思議な思い、たゞ一つ分らないのは女の心だ。

あんなに堅いことを言うくせに、その身悶えや、夢中のうちに激しくもとめる情の深さは、どういうことだろう。全裸の全身を男に見られることなど一向に羞恥を見せず、される通りに平然としているのであった。