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れつのこころ
列のこころ
宮本 百合子
「大陸」1940(昭和15)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,148 字 · 11 页
列は整頓の形でありながら、常にその奥に何か足りないもののあることを語っているのはまことに意味ふかいことではないだろうか。だから、いろんなもののための列が国民生活の日常に多くなって来ることはそれにつれて、それぞれの国の歴史の緊張の度合いが知られるということにもなる。
今までもよく外国がえりの人たちが、あっちでは市民の訓練がよくゆき渡っていて、何かあると誰云うとなく皆整然と列をつくって事を運ぶ、と褒めた。しかし市民が自分たちですぐ列をつくってゆく心理や習慣を持っているということは彼等にとって決してなま容易い生活経験から身につけられたものではないにちがいない。第一次の大戦というものは、彼等に深刻な社会的な逼迫から人間のつくる列の真意をさとらせていたのだと思う。列は、儀礼と礼節とのためにもつくられるけれど、列が生じるのは、一に対する十の必要が動機である。そこに列の生きて脈搏つ真の動脈がひそめられている。その脈搏は生きものだから、事情によっては搏ちかたも変って来る。列というものは元来が案外動的な本質をふくんでいるのである。
それやこれやから、国民生活の中に列が多種になり、長くなり、どっさりになるにつれて、謂わば列そのものが国民の身をもって示している課題の種類の多さと複雑さとさし迫った解決の必要を語るものであること