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しょかのふしぎ

初夏の不思議

小川 未明

「赤い鳥」1923(大正12)年6月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,669 字 · 8 页

青空文庫

」と、小僧は、耳たぶを真っ赤にして、答えました。

「それでは、まからないのかい、じゃ、いらないよ。」

女は、邪慳にいって、手に取りあげていたいちばん大きなすいかを投げ出すように、かごの中へ落としました。あまり、手荒であったため、大きなすいかは、下のすいかにぶつかって傷がつきました。

小僧はびっくりいたしました。

「お、奥さん、こんなに傷がついてしまいました。傷物になっては、主人にいいつかった値では、どこへいったって売れません。ど、どうかこのすいかを買ってください。」と、顔を赤くして、頼みました。

「なに、私が、そんなことを知ったものかね、私は、下に置いたばかしなのだよ。」と、女は、邪慳にいって、相手にしませんでした。

この有り様をだれも見ていたものはありません。ただ、太陽だけが、空から、ながめていました。小僧は、途方にくれて、目に、いっぱい涙をためていました。

ちょうど、このとき、あちらから、かすんだ往来をまだ若い薬売りがやってきました。二、三年前まで、おじいさんが、薬を売りにやってきたのでしたが、このごろは隠居でもしたのか、まだ若い男が、旅から、わざわざこの村の方までやってきて、薬を売るのでありました。