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しょかのふしぎ

初夏の不思議

小川 未明

「赤い鳥」1923(大正12)年6月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,669 字 · 8 页

青空文庫

「先祖代々の家伝、いっさいの妙薬。」といって、歩いてきました。

やがて、若い薬売りは、箱を負って、すげがさを目深にかぶって、草鞋をはいて、こちらにきかかりますと、女と子供が、なにかたがいにいいあっているようすでありましたから思わず歩みをとめました。

「薬屋さん、いっさいの妙薬なら、このすいかの傷がなおされるだろう。」と、女は、あざ笑っていいました。

若い薬売りは、いったい何事が起こったのだろうと思って、にわかに、返事ができませんでした。すると、小僧は、どもりながら、今日のことをいっさい語って聞かせたのです。

この話を聞いた薬売りは、静かに顔をあげて、

「奥さん、それは、あなたのほうが無理です。」といいました。

女は、たいそう怒りました。

「なにが無理か。おまえこそいいかげんなうそをいって、人をごまかそうと思っているじゃないか。いっさいの妙薬なら、このすいかの傷をなおしてごらん。」といいました。

若い薬売りは、しばらく黙っていましたが、

「奥さん、なおしてみせます。」といって、脊に負っている箱をおろしました。そして、中から金色の薬をとり出して、その薬を水で溶かして、すいかの傷口に塗りました。