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しょかのふしぎ

初夏の不思議

小川 未明

「赤い鳥」1923(大正12)年6月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,669 字 · 8 页

青空文庫

女は、日の暮れるのを待っていました。やがて、晩方になると、町へいってみました。もう八百屋の小僧が夜店を出していました。そして、ちょうど、ひげの白い老人が、その前にうずくまって、例の金色のすいかを取り上げ、カンテラの火に照らしてながめていました。

女は、この有り様を見ると、そばへ寄ってきて、

「小僧さん、このすいかを私に売ってください。すこし子細がありますから。」といって、銭を払って、おじいさんの手から奪うようにして持ってゆきました。

空は、よく晴れて、きれいな星の光が、幾つもこの町を照らしていました。

女は、家に帰って、ランプの下で、もう一度よくすいかを見ました。しかし、どうしたことか傷口がわかりませんでした。そのとき、家じゅうのものがみんな出てきて、ランプの下に集まりました。そして、女の話をきいて、すいかをめいめいが手にとってながめて、不思議がりました。

「このすいかを切ってみなさい。」と、おばあさんがいわれました。

女の亭主も、おじいさんも、叔母さんも、それがいいといったので、女は、さっそく庖丁を持ってきて、真っ二つにすいかを切ってみました。すると、その中は、真っ赤であったばかりでなく、血がだくだくと切り口から流れたのです。