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はつこい

初恋

矢崎 嵯峨の舎

「都の花」1889(明治22)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,226 字 · 39 页

青空文庫

。日はもウ七ツ下り、斜めに水を照らし森を照らして、まことにいい景色である,がもう見る気はない,娘が貌に失望の意を現わして、物をも言わず、悄然として景色を眺めつめているのを見ては。

「おや、こんな大きな沼があるようでは……こちらでもなかッたと見えますねエ、しかたがない、後へ戻りましょう」

娘は歎息したがどうも仕方がない、再び踵を廻らして、林の中へはいり、およそ二町余も往ッたろうか、向うに小さな道があッて、その突当りに小さな白屋があッた。娘はこの家を見ると、少し歩くのを遅くして、考えている様子であッたが、

「秀さん、ちょうどいい。あすこの家へ往ッて頼んで、皆さんを尋ねてもらいましょう。それに皆さんも私たちを尋ねて、ひょッと彼家へでも尋ねて往ッて、もし私たちが来たら止めておくようにと頼んであるかも知れません,まァ彼家へ往ッて見ましょう」

自分は異議なく同意して、いきなりその家へ飛び込んだ。家では老夫婦が糸を取り、草鞋を作ッていたが、われわれを見てびッくりした様子,自分は老婆に向い,

「おイ婆やア、誰か尋ねて来なかッたかい、おいらたちを」

「はアい、誰もござらッさらねエでしたよ」