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はつこい

初恋

矢崎 嵯峨の舎

「都の花」1889(明治22)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,226 字 · 39 页

青空文庫

「花は白い方が奇麗ですねエ、赤ッぽいのよりか」

「そうですね、淡白していて。赤いのはなぜおきらい?」

「なぜッて? 赤いなア平家の旗色で、白いなア源氏ですもの,源氏の方が強いから、だから……」

愚にも附かぬことを言いながら、内庭と外庭の間の枝折戸の辺まで近づいた。と見ると花壇に五六本の白牡丹が今を盛りと咲いていた,その花の下に飼猫の「コロ」が朝日を一杯背中に受けて、つくねんとうずくまッていた「日向ぼこりをしているのか、居睡りをしているのか?「牡丹花下の睡猫は心舞蝶にあり」という油断のならぬ猫の空睡,ここへ花の露を慕ッて翩々と蝶が飛んで来たが、やがて翼を花に休めて、露に心を奪われて余念もない様子であッた。油断を見すました大敵、しかし憎げのないひょうきん者め、前足を縮めて身構えをしたが、そら、飛びかかッた,蝶は飛び退いたが、あわてて、狼狽て、地下をひらひらと飛び廻わッていた,が、あわや「コロ」の爪にかかりそうになッた。

「あらまア! あんないたずらを」と娘は走せよッて、

「およし可哀そうに」

娘はしなやかに身を屈めて、「コロ」を押えながら蝶を逃がした。それから「コロ」