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りしりざんとそのしょくぶつ

利尻山とその植物

牧野 富太郎

「山岳 一の二」1906(明治39)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,115 字 · 22 页

青空文庫

ことが出来ないという有様であるから、一行も殆んど何の愉快を感ずることが出来なかったのである、加藤子爵が今では大事の盆栽としておられる、エゾマツの数本寄せ植の小さな鉢物は、この食事をした場所で岩の上に実生のかたまりがあったのを、木下君がいたずら半分に採られたのであったと思う、その当時はあんなに美事の盆栽になろうとは思わなかったが、人の丹精というものは誠に怖しいものであると思う程の盆栽となったのである。

食事をした場所から先きは、水のある谷を伝うて遡って行くのであって、別段道という道は更にない、谷の両岸はいずれも雑木やら笹原やらで、谷の中にある石は重に丸味勝の石であったように覚えている、進むに従って谷は漸く窮まって、水も次第に少なくなる、その辺からして谷を捨てて、右の方へ横に這入ったが、傾斜がますます急で殊に笹が密生して登るのには非常に困難を感じた、この辺でザゼンソウを採集したと思う、笹原の急な傾斜も終には尽きて、低いエゾノタケカンバあるいはその他の樹の、ハイマツに混じて生えているところに出たが、いずれも高くないだけに、ある時には跨ぐ