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とねがわのあゆ
利根川の鮎
佐藤 垢石
「つり人」1948(昭和23)年4月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,875 字 · 10 页
ふるさとの水
だが、これからもなお、水を訪い山を訪ね、そして水も山も温かく私を抱擁してくれるであろうと思うだけが、せめて私の生へのきずなである。過ぎし日の水と山との旅の回顧、またこれからも遠く山と水が私を待っているのを想うことを許されるならば、なんで生への執着を抛つことができよう。
私はここで、過ぎし日の水と山の旅、六十年の想い出を、記憶するがままに播いてゆきたいと思う。
ふるさとの水
なんとしても、私に親しみ深いのは、ふるさとの水と山とである。
私の故郷は上州の中央にあり、利根川の激しく流れる崖の上の村である。私の六、七歳のころであったと思う。平野から遙かに仰ぐ、遠い上州と越後の国境に聳える雪の白い山脈に源を発する利根川は、流れをなして幾十里、流れ流れて谿と峡を私の村まで流れてきて、それからは次第次第に流れを緩め、東南の方、下総の国を指して、悠々と流れ去るのである。そのころの利根川には、いま想いだしても、うそではないかと思えるほど、夥しい群れの若鮎が下流の方から遡ってきた。
それというのは、今から五十余年もの昔は、水源地方の原生林が乱伐されないこと、水力電気の堰堤が流れを遮らぬこと、現在と比べて白根火山から流れてくる毒水が希薄であったために、天然のままに保存された水流を慕って、いろいろの魚が、遠い遠い銚子の海口の方から