轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しせい
刺青
谷崎 潤一郎
「新思潮」1910(明治43)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,651 字 · 12 页
それを恐ろしがるのも、まあ今のうちだろうよ」
こう云った清吉の顔には、いつもの意地の悪い笑いが漂って居た。
然し娘の頭は容易に上らなかった。襦袢の袖に顔を蔽うていつまでも突俯したまゝ、
「親方、どうか私を帰しておくれ。お前さんの側に居るのは恐ろしいから」
と、幾度か繰り返した。
「まあ待ちなさい。己がお前を立派な器量の女にしてやるから」
と云いながら、清吉は何気なく娘の側に近寄った。彼の懐には嘗て和蘭医から貰った麻睡剤の壜が忍ばせてあった。
日はうらゝかに川面を射て、八畳の座敷は燃えるように照った。水面から反射する光線が、無心に眠る娘の顔や、障子の紙に金色の波紋を描いてふるえて居た。部屋のしきりを閉て切って刺青の道具を手にした清吉は、暫くは唯恍惚としてすわって居るばかりであった。彼は今始めて女の妙相をしみ/″\味わう事が出来た。その動かぬ顔に相対して、十年百年この一室に静坐するとも、なお飽くことを知るまいと思われた。古のメンフィスの民が、荘厳なる埃及の天地を、ピラミッドとスフィンクスとで飾ったように、清吉は清浄な人間の皮膚を、自分の恋で彩ろうとするのであった。