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こくこく

刻々

宮本 百合子

「中央公論」1951(昭和26)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,401 字 · 73 页

青空文庫

スローガンだけあるが、生産を国家管理にするといっても、それはどういう国家がどう生産を管理するのであるのか、階級なき新日本と云っても、犬養を殺し、軍部が暴威を振って階級が無くなるものでもなし、ファシズムの信じ難いほどの非科学性を暴露したビラである。

「……ファシストの理論はなっていないようだが……これで赤松あたりが大分関係があるらしいね。案外な役割を買って出ているらしいですよ」

最近分裂して国家社会党を結成した赤松のことは関心をひき、自分は、

「今度の事件にでもですか?」

と、ききかえした。

「サア、そこいらのところは分らんですがね。総同盟系が何しろ五万というからね」

煙草をプカリ、プカリと吹き、

「五万の人間がワーッと動き出せば、放っても置かれまいじゃないですか」

それだけ云って、あとは煙草を指に挾んだままの腕組みで凝っと横目に私の顔を眺める。――

「…………」

対手の眼を見つめているうちに、仄めかされた言葉の内容が、徐々に、その重要性と具体的な意味とで分って来る。――

間を置いて、私は歯の間から一言、一言を拇指で押すように云った。

「――然し、それは窮極において一時の細工だ。