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こくこく

刻々

宮本 百合子

「中央公論」1951(昭和26)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,401 字 · 73 页

青空文庫

話しながら自分はちょいちょい、母親の手提袋を膝にのせて控えている妹の顔に視線をやった。母親との話はすぐとぎれた。すると妹が、

「――やせたわね」

と眼に力を入れて云って、可愛い生毛の生えた口許にぎごちないような微笑を泛べた。

「そうオ?」

頬ぺたを押えながら、自分はゆっくりこちらの気持を打ちこむように云った。

「どう? みんな変りなくやっている?――この頃は私の知りもしないこと云え云えで閉口さ」

「そうなの!」

びっくりしたように目を大きくする。押しかぶせて、

「どう? 何か変ったことないの?」

意味ありげな顔つきをしている癖に、こういう場面に全く馴れない妹は何も云えず、母親は母親で、やはり気持のはけ口を求め、神経的に真白い足袋の爪先をせわしく動かしている。――心配をしているのは真実なのだが、彼等は、はっきり私の側に立って、たまの機会はどしどし積極的に利用するという確り引立った気分で腰を据えていないから、手も足も出ない有様なのであった。

母親は、持ち前の性質から、矢張り、そんな犬の仔の話などしておれない気持になり、段々焦立って、遂には議論を私に向ってふきかけ始めるのであった。