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ぜんきてんまやけ

前記天満焼

国枝 史郎

「文芸倶楽部」1927(昭和2)年6月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,568 字 · 98 页

青空文庫

鮫島大学と申します。それより何より禄の方をな、定めることに致しましょう。一日五両はどうでござる」

ここまで云って来て黒鴨の武士は、ヒョイと二三歩下ったが、首を傾げると覗くようにした。

「ただし……」と云うと黒鴨の武士は、今度は二三歩前へ出た。

と、例によって囁くような声で、

「ただし、仕事はちと困難、と云っても貴殿の腕前なら、勿論何でもなく仕遂げられますて。ところで仕事の性質は? と、貴殿には訊かれるかも知れない。さあこれとて考えようで。善悪両様に取られますなあ。そこで、こいつは預かるか、ないしは善事だと決めてしまうか、ホッ、ホッ、ホッ、どっちでもよろしい」

三十七八の男の癖に、ホッ、ホッ、ホッと女のような、滑らかな厭らしい笑い方をしたが、

「さてここまで云って来れば、後は何も彼もスッパリと、ぶちまけた方がよろしいようで。そこでお打ち明け致しましょう」

ところがそれ前に若侍は、蹴飛ばすような声で云った。

「解っておるよ!」とまずノッケだ。

「受負でござろう、殺人のな!」

「ほほう成程、そう解されたか」

「でなかったらぶったくりさ」

「成程な、なるほどな」

黒鴨の武士は退いたが、