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ぜんきてんまやけ

前記天満焼

国枝 史郎

「文芸倶楽部」1927(昭和2)年6月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,568 字 · 98 页

青空文庫

大騒ぎをするに相違ない。世間が大騒ぎをすることによって、この屋敷のカクラリが、暴露されないものでもない。それが彼等には恐かった。それで手捕りにしてふん縛り、うんと虐め懲しめて、今後二度と来させまいとするのが、彼等悪漢共の思惑なのであった。

ところが一方源三郎は、怒りと屈辱とで正気を失い、今や狂暴になっていた。そこで、無闇とあばれ廻り、無二無三に匕首を揮い、遠慮会釈なく人を切る。捕らえることも抑えることも出来ない。

10

しかし扉が開いてこの屋敷の主人の、鮫島大学が現われて、無雑作に源三郎の前に進み、源三郎の手をムズと掴み、グッとばかりに引っ立てた瞬間、この場の治まりは付いてしまった。

「汝は誰だ!」と源三郎は怒鳴った。

「拙者かな、拙者かな、さあ何者でござろうやら」

「痛え痛え、手を放せ!」

「ホッ、ホッ、ホッ、お痛いかな」

三十七八の男の癖に、ホッ、ホッ、ホッと、女のような、滑らかな厭らしい笑い方をしたが、

「これ」とにわかにいかつくなった。

「二度と来るなよ、こんな場所へ! 人に云うなよ、この場の光景を」

更に一層凄くなり、

「上海仕立ての遊戯室、世間へ明かしたら賽の目だ、無いぞないぞ、汝の命は! 痛えどころか殺すぞよ!」