轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ぜんきてんまやけ
前記天満焼
国枝 史郎
「文芸倶楽部」1927(昭和2)年6月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,568 字 · 98 页
「ううむ」と唸ったが岡引の松吉は、早くも決心をしたらしい。飛びかかると格子をソロリと開け、それを閉じると穿物を脱ぎ、懐中に入れたが敏捷である、障子を開けると辷り込んだ。
「だアれ!」と直ぐに声がして、つづいて隣部屋から現われたは、風俗で解る、女役者であった。
「太夫、頼む、かくまってくれ!」
ちょうどその日のことである。時刻は午後三時頃でもあろうか、所は蔵前の表通り、そこに立っている加賀屋の店へ、しとやかに入って来た若侍があった。
「拙者は宇和島と申す者、当家御主人にお目にかかりたく、大阪表よりまかりこしてござる、よろしくお取次ぎ下さいますよう」
若侍は奥へ通された。
17
「町役人の方が参りまして、主人に逢いたいと申しました。そこで丁寧に奥の間へ通し、その旨を主人に申しましたところ、早速主人はそのお方にお逢いし、しばらくお話しして居りましたが、私は手代のことではあり、その場にも居らず、立聞きもせず、店へ参って居りますと、やがてそのお方がお帰りになり、主人も送って出られましたが、その時の主人の顔の様子が、変わって居りましてございます。不安の気持とでも申しましょうか、そんなようなものが顔に見え、おどついていたのでございますが『困った奴だ! 源三郎め! これが本当なら勘当ものだ! えいこうしてはいられない! 調べてやろ