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ぜんきてんまやけ
前記天満焼
国枝 史郎
「文芸倶楽部」1927(昭和2)年6月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,568 字 · 98 页
と気込んでその縄を引いたが、
「なんだ! こいつアー 青竹の杖か!」
乞食の両脚を搦んだものと、固く信じた松吉であったが、見れば見当が外れていた。乞食は青竹の杖を突いて悠然として立っている。その杖へ縄が搦まっている。万事意表に出たのである。
だがその次の瞬間に、もう一つ意外の出来事が起こり、ますます松吉の肝を冷やした。と云うのは岡引の松吉が、
「いよいよ手前!」と叱咤しながら、グーッと縄を引っ張った途端、スルリとばかり杖が抜け、ギラツク刀身が現われたからである。
「青竹仕込みの。……」
「偽物で。……」
「何を!」
「見なせえ!」と上州という乞食は、カラッと刀を放り出した。
「どう致しまして……そんな古風な……敵討ちの身分じゃアございませんよ。……ましてや大袈裟な謀反心なんか、持っている身分じゃアござんせんよ。……玩具でござんす! 銀紙細工の! もっとも」と云うと身をかがめ、
「呼吸さえ充ちて居りますれば、竹光であろうとこんなもので」
その竹光を拾い上げ、スパッとばかりに叩っ切った。
立木があって小太かったが、それが斜かいに切り折られ、
その切口が白々と、昼の陽を受けて光ったのである。