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けんのよんくんし
剣の四君子
吉川 英治
03 林崎甚助
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,514 字 · 22 页
「苦行のかいがあったか」
と思われるように、頭脳は冴え、心は清澄に、技もわれながら、見事になって来た。
しかし、それは、技のみであった。
「心は?」
と、訊ねてみると、空漠だった。何も得てない気がした。
「これでいいのか」
迷い出した。一心不乱がみだれかけた。壁に突き当ったように技も進まない。われとわが身がふがいなくなって死にたくさえなった。
そこを超えて、
「何を」
と、魔とも人とも思われない形相になった頃、大杉の幹の刀痕は、九十を超えていた。
「もう百日」
とも思わなかった。甚助は発狂していたかも知れないのである。一刀、一刀、また一刀、空を斬っては鞘におさめる時の凄まじい彼の気合は、もうしゃ嗄れ果てて、何ものか世にあり得ない野獣の咳声のようだった。喉はやぶれ手足は血によごれていた。百日も櫛を入れない髪には落葉の骨がたかっていた。雨露にまみれた袴、小袖、それも傷ましく綻び果てている。そこからかなり距てている甚助の家へまで、近頃は、夜になると、最上川の水音より明らかに、彼の狂わしいしゃ嗄れ声が響いて行った。楡葉は、共に寝なかった。
いや遂には、
「百日の間は顔を見せぬ」