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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

「わしも麒麟と呼ばれて居るよ」

「御意で」と今度は頭を下げ、

「関東の麒麟と称されて居ります」

「鳳凰と麒麟……似合うではないか」

「まさにお似合いではございますが、似合うと申して門札を……」

「ナニわしだから外して来てもよろしい」

「麒麟だから鳳凰の門札を……」

「さようさよう外して来てもよろしい」

「ははあ左様でございますかな」

「他の奴ならよろしくない」

「…………」

「ということは存じて居る。さよう逸見氏も存じて居る」

「…………」

「人物は人物を見抜くからの」

「はい、もう私などは小人で」

「そのうちだんだん人物になる」

「はい、ありがたく存じます」

とは云ったものの浪之助は、

(うっかり物を云うとこんな目に逢う。訓された上に嚇されてしまう)

こう思わざるを得なかった。

「それに致しましても先生には、何と思われて小川村などへ参り、何と思われて逸見先生のお宅などへ……」

「武術試合をするためにさ……」

「それだけの目的でございますかな?」

「真の目的は他にある」

「どのような目的でございますかな?」

「赤尾の林蔵を関東一の貸元、そいつに押し立ててやりたいのだ」

「そのため逸見先生と試合をなさる?」