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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

「それを一々嘉門様には、お取り上げなされてご合力なさる」

「感心だな。金があるからだろうが」

「親分方といたしましても、見て見ぬふりも出来ませんので、お訪ねをしてお礼を云う」

「義理堅い手合だ、そうだろう」

「嘉門様には一々逢われて、丁寧にご会釈なさるそうで」

「金持には珍しい心掛けだな」

「そこで諸国の親分衆と、嘉門様とはそんな関係から、ずっと永らく交際して居られ、嘉門様が旅などなさいますと、その土地々々の親分衆が、争って歓待なさいますそうで」

「ははあそうか、よく解った」

「高萩村の猪之松親分とは、心が合うとでも申しましょうか、わけても親しいご交際だそうで、馬市が終えると大金を持たれ、毎年のようにこの土地へ参られ、猪之松親分をお相手にして、上尾の宿がひっくり返るほどの、多々羅遊びをなさいます」

「フーンそうか、豪勢なもんだな」

「と云いましても抜目は無く、武州には小金井の牧場があり、牧馬や、牧牛が盛んでありますから、その間に牧主や博労衆などと、来年の馬市の交渉などを、なさいますそうでございます」

「それはまあそうだろう」

「多々羅遊びをなさいまして、上尾の宿を潤しますので、馬大尽がおいでになったと聞くと、宿の人達は大喜びで、お祭のようにはしゃぎます」