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けんきょう
剣侠
国枝 史郎
「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页
がそれとて自分自身のために、その場所を知ろうとするのでもなく、又行こうとするのでもなく、自分の難儀を救ってくれた人秋山要介という人のために、知りたい行きたいと思うのであった。
浮かんで来る幻影を追いながら、今も彼女は思っていた。
(行かなければならない、さあ行こう!)
で、彼女は立ち上った。
※(歌記号、1-3-28)昔はあったということじゃ
昔はあったということじゃ
又彼女は口ずさんだ。
そうして大薮を分けながら、大薮の外へ出ようとした。
その大薮の外側には、以前から彼女を狙っている吸血鬼水品陣十郎が、抜身を提げて立っているはずである。
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後へ下った陣十郎は、刀を下段にダラリと下げ、それでも眼では油断なく、主水の眼を睨みつけ、歌主の在所がどこであるかと、瞬間それについて考えた。
周囲には大薮があるばかりで、その他は展開けた耕地であり、耕地には人影は見えなかった。
声から云っても歌の性質から云っても、歌ったのは源女に相違ない。
が、源女などはどこにもいない。
(さては自分の空耳かな?)
それにしても余りに明かに、歌声は聞こえてきたではないか。
源女だ源女だ歌ったのは源女だ!