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げきだん「わらうようま」

劇団「笑う妖魔」

山本 周五郎

「少年少女譚海」1938(昭和13)年夏期増刊号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,705 字 · 18 页

青空文庫

道化の死

この席は最前列だ。そこに座っていれば、僕が舞台から証拠の品を投げる。そしたら、五郎はそれを拾って直ぐ家へ帰り、父さんに渡してくれ。重大な仕事だから間違いのないように頼むぞ! もしこれが成功したら、父さんもきっと僕の罪を赦して下さるだろう。それだけを望みに、僕は身命を賭してやるよ。五郎、頼むぞ!哀れな兄より。

道化の死

「哀れな兄より」

そう呟く五郎の眼には、熱い泪が溢れていた。――これで分った。劇団の秘密と云うからには、例の怪殺人事件に相違ない。こいつ一網打尽にしてやるぞ! そう思う下から、ふと気づいたのはゆき子の事である。今から思えば兄の電話で彼女は家を出たのだ。それが兄と会っていないとすれば……。

――奴等にみつかったのだ。

五郎は閃めくようにそう思った。ゆき子はいま恐るべき殺人団の手に捉っているのだ。

五郎は決然と立ち上った。――そして食堂を出るとすぐ警視庁へ電話をかけ、かねて父の友人としてよく知っている布山刑事課長を呼んで何やら頼んだ後、紙丸の中に入っていた入場券で劇場の中へ入った。

もう一番目の奇術の幕があいていて、場内はぎっしりの観客だった。