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かご
加護
宮本 百合子
「大阪毎日新聞(夕刊)」1920(大正9)年8月17日~28日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,147 字 · 33 页
いよいよ葬送もすんだ晩、一きわ寥しい部屋に二人が抱き合うようにして流し合った涙は複雑なものであった。けれども、総ての複雑さを一つに纏めて、結局の処から戻って来るものは、お互の限りない友愛に対しての悦びと感謝とであった。
「ありがとう、ほんとにお世話様になりました」
そう云いながら頭を下げるお恵さんの手をとって、お幾は、さも飛んでもないというように振った。
「まあお礼! お礼なんかはよその人にして下さい」
こんな時彼女の胸には、等しく深い感激が漲った。けれども、何か、もう一歩お幾には足りないもののあるのを争うことは出来なかった。
彼女の胸にはどうしようもないうちに来てしまった第二番目の禍を送って、更にその次の不幸が危ぶまれていたのだ。が、然し口に出してそれを警告する勇気はない。二人が打とけた心持で話し合っている時も、泣き合っている時も、そのことが心に浮ぶと、お幾はフト瞳をかえして、最愛な友の面を眺めずにはいられない気分になって来るのである。
その日も、お幾は厚く着膨れた襟の下に同じ思いを抱きながら、お恵さんの門前で俥を降りた。
寒い日である。まだ二七日を過ぎたばかりの森閑とした家の中に、竦むようにしてお恵さんは炬燵に当っていた。