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かご

加護

宮本 百合子

「大阪毎日新聞(夕刊)」1920(大正9)年8月17日~28日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,147 字 · 33 页

青空文庫

然し、誰一人、親しく自分を鼓舞してくれる者もなく、確かりなさい、と、肩を叩いてくれる者も持たないお恵さんにとって、これは、一方ならない、励しの言葉であった。

とにかく、お幾の元気が、細そりと、蒼白い、お恵さんの肉体を貫いて、一種の電気でも通じるように見える。次第に、彼女自身も亢奮し、覇気を持ち、踏み出した道なら退くまいという勇気が、湧いて来るように感じるのである。

素直なお恵さんは、この刺戟一つに対しても、お幾の友情を徳とした。

彼女は、心から、

「ありがとう。私も確かりしますわ。本当に、自分の心ほど、自分で判るようで判らないものはないのですものね」

と云った。

「私も、せいぜい元気になりますよ」

二人は、笑顔を見合わせた。

「そうですとも。私だって、出来ることなら、この体の半分も、あなたに足してあげたい位に思っているのですもの」

自分の言葉が、快よく受け入れられた歓びで、お幾の血色よい顔は、一層つやつやと輝くように見えた。

彼女は、気軽な滑稽を云いながら、淑子や女中を集めて、御持参の鮨の折を開いた。

それから間もない或る朝のことであった。

お恵さんは、いつものように、手軽な朝飯を終ると、身仕度をし、自分で夜来閉された門を開いて家を出た。