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すけごろうよざい

助五郎余罪

牧 逸馬

「探偵趣味」1926(大正15)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,407 字 · 15 页

青空文庫

と若造が訊いた。つづいて背後の破目板の銓を捻った。そして、

「なにしろ、これだからね」

と両の拳を鼻さきへ積んで見せた。

二三人這入って来た。湯を打つ水音に呑まれて、二人の声はもう助五郎の耳へは入らなかった。

助五郎も聞こうとはしなかった。自暴のように陸湯を浴びた彼は、眼をぎょろりと光らせたまま板の間へ上って行って籠の中から着たきり雀の浴衣を振って引っ掛けると、蠅の浮いている河鹿の水磐を横眼で白眼みながら、ぶらりと明治湯の暖簾を潜り出た。

助五郎は金儲けのにおいを嗅いだ。張るの殴るの取って投げたという以上、これは明らかに彼の領分である。詳しいことを聞き出して手繰って行けば案外な仕事になるかも知れない。夏のことだから氷屋がある。その店頭へ腰を下ろした助五郎は、一本道の明治湯の方へしっかり気を配りながら坊主頭の若い衆を待ち受けた。

二

坊主頭の話というのはこうだった。一昨日の暮れ方、乗物町の師匠として聞えている笛の名人豊住又七が、用達しの帰り、自宅の近くまで差しかかった時、手拭いで顔を包んだ屈強な男が一人矢庭に陰から飛び出して来て、物をもいわずに又七を、それも、まるで猫の児かなんぞのように溝の中へ投げつけるが早いか、何処ともなく風のように消えてしまったというのである。