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『ろうどうせんせん』しょうせつせんごひょう

『労働戦線』小説選後評

宮本 百合子

「労働戦線」産別会議機関紙、1948(昭和23)年10月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 926 字 · 2 页

青空文庫

四十篇の原稿のなかから新日本文学会の書記局で予選された二十篇をよんだ。そのどれもが、それぞれかかれた環境においてのねうちをもっていて、等級をつけるのがむずかしかった。同時にそのことはとびぬけた作品はなかったことも意味し結局入選は紙上で知らせたようになった。

「雛菊寮雑記」(代々木暁夫)――若い婦人車掌だけの寮雛菊寮に暮す佳子、美代、文江、喜久枝たちが笠井重吉という学校出の運転手をかこむ女車掌らしい感情のいきさつを描いている。奔放で傍若無人な美代子が婦人部長としてはがっちり働いてゆきつつ重吉に対する佳子の傾倒にちょいと意地わるしたりする動きがよくとらえられている。重吉にうかれる佳子が雛菊寮の中の共産党毛ぎらいのふん囲気におのずから一致しかねているところも無理がない。ただ、おしまいに近いところで佳子が間接に重吉の自分に対する好意をきいてうれし涙にぬれる顔を井戸ばたで洗うところの描写は誇張されている。この作者は、達者にならないように心がけていいと思う。

作品のほとんどすべてが、文学として非常に素朴であった。作品にとりあげられている現実においてどの作品にもうそがなく、その範囲でテーマは正しく題材の中につかまれている。