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かたずば
勝ずば
岡本 かの子
「新女苑」1937(昭和12)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,991 字 · 15 页
多可子はこの政枝の言葉の裏を華岡が了解して、成るべく沢山の気休めを云って呉れればよいと思った。だが華岡の口を切る前に傍にいた寛三が割り込んでしまった。
「政や、この先生はね、大学で新らしい学問をしていらっした方だからね。この先生に診て貰っておれば、きっと治して下さるんだよ」
お座なりの見当違いの説明に、必死の望みを外された政枝は、見る見る顳に青筋を立てて父親を瞠んだ。娘がそんな気持ちでいるのも感じないで、この場の妙に白らけたのを取り做すように、寛三は更に娘に向って云い聞かせるのであった。
「さあ、もう先生をお帰し申すのだよ。先生は他にまだ沢山苦しんでいるご病人をお持ちだからね」
「他の病人なんか華岡先生じゃなくて、他のお医者様を頼めばいいわ」
政枝はヒステリー女のように憎々しげな口調で云い放った。
「おばさん一緒に死んで呉れると云ったわね」
と夫のある自分をいくら少女でも十四にもなった政枝が思いやりもなく責めるのも、可愛相より時には怖しく聞く多可子は、その病的な利己心にそら怖ろしい気がするのであった。
華岡は当惑して暫らく傍観していたが、「明日来て、よく話すからね」