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かたずば
勝ずば
岡本 かの子
「新女苑」1937(昭和12)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,991 字 · 15 页
いつまでも政枝の側に坐っていると段々「生きなければならない理由」を政枝に云って聞かす約束が迫って来るようないらだたしい気がして居辛かった。それに自分のはしたない身なりが気になったので、寛三にそっと目まぜして帰って行こうとした。
そのとき政枝は澄んで淋しげな眼を開いて、じっと多可子の顔を見た。
「出直して来るからね。じっとしていらっしゃい」
多可子は一時逃れを云った。家へ帰って落ち着いた上、政枝のことや、彼女に対する自分の態度というようなことに就いて充分考えてみたかった。どうせ神経質で老成している政枝が自分にこの上追及して来ないとは思えなかった。
「おばさん生きなければならない理由を話して下さい」
父親は呆れた顔で政枝の傍へ寄って来た。
「お前は死にはしないんだから。直ぐ癒るよ」
多可子も寛三の言葉について云った。
「本当よ。あんたのような若いひとが死ぬんなら、それより前に私なんかが死んでしまうわ」
多可子は捨身の説明をした。
「そいじゃ、私が死ぬようなときは叔母さんも死ぬんですか」
「ええ、あんた死なせるもんですか。でもね、きっと癒りますから、安心して元気になりなさい」