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けしょうのもの
化生のもの
豊島 与志雄
「世界」1950(昭和25)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,086 字 · 27 页
そして、煙草をもてあそぶことが多くなった。それも、もともと煙草好きというのではなかったし、時折、口先でふかすだけである。
「わたくし、なんだか肥ってきたようで、いやですわ。」と彼女は言った。
「却って、結構ではございませんの。どちらかと言えば、痩せていらっしゃる方ですもの。」
「それはそうですけれど、もしも、ぶくぶく肥ってきたら……と思いますと、いやになりますの。この年では、まだ、可哀そうでしょう。」
「いいえ、お気になさるほど肥ってはいらっしゃいませんよ。そんなこと仰言ると、わたくしなんか、あてつけみたいに聞えましてよ。」
「だって、わたくし、独り身ですもの。痩せてる方がよろしいわ。だから、こうして、煙草を吸うことにしていますの。煙草を吸ってると、肥らないそうですから。」
彼女は晴れやかに笑った。
そのようなこと、全く、彼女の腹部とは関係がなさそうだった。その腹部がいつまでもふくらんでこないので、知人たちは少し期待外れがした。
知人たちといっても、三十五歳にもなる彼女の交際だから、男性が相当に多かった。そして男の側には、彼女に関するひそかな噂は、女の側によりも、一層悪い印象を与えた。