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けしょうのもの

化生のもの

豊島 与志雄

「世界」1950(昭和25)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,086 字 · 27 页

青空文庫

軽蔑と無関心とは紙一重の差だったのである。

丁度その頃のことである。

小泉美枝子は少しく思い悩んでいた。彼女自身にも訳の分らない欝陶しさで、一時間も、二時間も、ぼんやりしていることがあった。それでも、来客にはすべて快活に応対した。習性なのである。

浅野正己が来た晩、美枝子は彼を応接室の方へ通さした。中学生の哲夫の勉学を週に二回ほど見てもらってる男なので、哲夫が風邪の心地で寝ているところだから、そのまま帰してもよかったのだが、ちょっと心にかかることがあったのである。彼女は哲夫の様子を見て、それから応接室へ出て行った。

浅野はつっ立って、壁にかかってる洋画の風景を眺めていた。慌てたようにお時儀をして、まだ立っていた。

「どうぞ。」

窓際の小卓を美枝子は指して、自分は横手のソファーに腰を下した。

「哲夫君、いかがですか。」

「ちょっと風邪の気味ですけれど、一日か二日、臥っておりましたら、なおろうかと存じます。お知らせするひまがなくて、済みませんでしたね。」

「いえ、僕の方は構いませんが……どうぞ、お大事に。」

も少し居たものか、すぐに辞し去るべきか、浅野は迷ってるらしかった。