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きたのふゆ

北の冬

小川 未明

「新小説」1908(明治41)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,166 字 · 11 页

青空文庫

其処で一同は、互に警め合って、家を出てその提燈の行衛を追うて行った。皓々として、白雪に月の冴え渡った広野は、二里も三里も一目に見えるように薄青く明るかった。夜が更けるに従って、雪が凍って堅かったが、各自が警め合って雪の上を踏んで行くと、脛を切るように抜け落ちるのである。折々木枯が激しく吹き荒んだ。けれど彼方に見える三つの提燈の燈火は瞬きもしなければ、揺れもしない。独りでに歩んでいる。やっと二三十間ばかりの処に近づいて、月の光りに透して見ると、提燈ばかりが歩いているのでなく、何やら人が持っているのだ。その人が――極くうすらりとして見えるのには、真白の装束を着た、全く常の人間でない。

「あっ、幽霊だ!」と一人は覚えず叫んで、其処に腰を抜した。同じくこれを見た一同は満身に水を浴せられたようにぶるぶると手足が戦えて竦んでしまった。で、野原の雪の中に蹲踞って眤と白装束の三つの影を見送っていると、最初に立ったのは、老人のようで頭に何か白いものを被っている。十間ばかり隔て、その次のはそれより少し脊が低くて、子供のような歩き方だ。また十間ばかり隔て最後の一人は長く黒髪を後に垂ていて女のように思われた。